2005年 10月 18日 ( 1 )

 

お勧めCD

d0023622_15303.jpgBADEN POWELL 「The Best Of Baden Powell」  

3年くらい前、急にボサノヴァに興味を持ったのですが、やはりこの人が僕のベストです。
バーデン・パウエル・ヂ・アキーノ、通称バーデン・パウエル。(1937〜2000)ブラジル・リオデジャネイロ生まれ。「ボサノヴァ・ギターの神様」とまで呼ばれたギターの達人でしたが、既成概念のボサノヴァを期待して聴くとぶっ飛ばされます。そもそも、ボサノヴァというカテゴリーに収まるアーティストではなく、サンバを基本に、あらゆるブラジルの民族音楽を帰納させ、盟友の詩人ヴィニシウス・ヂ・モライス(こちらもブラジル音楽界の巨人)とともに「アフロ・サンバ」という一ジャンルを確立した奇才なのです。彼の音楽の特徴としては、その超人的な技術に裏打ちされたスピード感あふれる凄まじいコード・カッティング、サンバチーム・エスコーラ・ヂ・サンバで鍛えられた、ポリリズムを含む複雑なコードワーク、信じられないほど強烈なタッチから生まれるダイナミックなフレーズといろいろありますが、もっとも印象的なのは、どの曲からも意識的・無意識的に醸し出されるサウダージ(郷愁感)と呼ばれるセンチメンタリズムでしょう。
 かつてジャン・コクトーが「黒いオルフェ」で描いたように、サンバには熱狂と陶酔だけでなく、その裏には負のイメージ ー絶望、不公平、嫉妬、裏切り、そして孤独ー が内在しています。それらをひとつの曲の中で体現する様は、哲学的ですらあります。レディオヘッド(バーデンと同じ文脈でレディオヘッドが出るとは。自分でもびっくり。)のように絶望を99%鳴らすことによって逆説的に1%の希望を汲み取らせる方法論ではなく、それらをつづれ織りのように組み合わせていく手法は、聞く者にもっとプリミティブな感動を呼び起こさせます。
 アントニオ・カルロス・ジョビンの言わずと知れた大傑作「イパネマの娘(Garota De Ipanema)」はオリジナルの百万倍アグレッシブになり、「悲しみサンバ (Samba Triste)」ではパーカッシブかつ、モダン〜クラシックまでの卒倒もののふり幅のリズムに乗せて歌心満載のフレーズが繰り出される。「ユリディス(Euridice)」のたおやかさは極上だし、「離別(Deixa)」、「哀訴(Apelo)」では、弦よ切れろと言わんばかりのコード・カッティングに魂をえぐられる。
 幸福と失望、喜びと悲しみ、慈愛と怒りをそっと寄り添わせ、圧倒的な「美」にまで昇華させる。すべてのミュージシャンが羨望必至のその才能に、まずはベスト盤でやられてください。ーTAKE


               
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  by macbeth30 | 2005-10-18 02:54

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